一部の喘息吸入薬に関する議論が以前から続いているが、新たなデータの見直しにより、この吸入薬が喘息による死亡リスクを3倍以上に増大させるという結果が報告された。問題の薬剤は、長時間作用性β(ベータ)刺激気管支拡張薬と呼ばれるもので、気道の筋肉を弛緩させて呼吸を楽にする作用をもつ。サルメテロール(商品名:セレベント)やサルメテロールにステロイド薬を配合したAdvair(日本では未発売)など人気の薬剤がこれに該当する。
米医学誌「Annals of Internal Medicine」7月4日号に掲載のこの知見は、米スタンフォード大学(カリフォルニア州)医学部臨床教授Shelley Salpeter博士らによるもの。Salpeter氏らは、3万4,000例近い被験者を対象とする19の喘息薬に関する試験について、幅広い「メタ分析」を実施した。
その結果、長時間作用性β刺激薬を使用した群の入院リスクはプラセボ(偽薬)群より2.6倍高く、生命を脅かす合併症のリスクは1.8倍高かった。死亡リスクは3.5倍高かったが、死亡例は極めて少数であるため、この数字の「信頼性」には限界があるという。それでも、この結果から、年間5,000人に上る喘息による死亡者のうち4,000例がサルメテロールによる可能性があるという。
Salpeter氏は、「この薬剤の使用は避けるべき」と結論付けているが、別の種類の気管支拡張薬である抗コリン吸入薬については、「極めて安全かつ有効」と述べている。
これに対し、米タフツ大学(マサチューセッツ州)医学部教授Jeffrey Glassroth博士は、長時間作用性β刺激薬には確かに危険性もあるが、それでも一部の人にとっては有用であると指摘。「この薬が第一選択ではないことを示す現行のガイドラインにもっと厳格に従うべき。最初に用いるべき治療法はほかにあり、多くの患者にとってはそれ以上のことは必要ない」と述べている。
今回の研究からは、この薬剤によるリスクが特に高い集団(アフリカ系米国人など)が存在することも示された。理由はわかっていないが、遺伝的因子による可能性があるという。
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